第50回美術の祭典・東京展 コミック各賞
作品評 わいっしゅ(審査代表)
もむら「朝霧」
ライティングによる瑞々しい空気感の表現がたいへん美しく、店先の暖かなハイライトと店構えの寒色、加えて店内の低照度とのバランスがそれを引き立てている。また、キーカラーを限定した色表現が全体的にシックな印象を与えており、朝という時間帯をよく感じさせる。
もし店先を通ったなら、所用があったとしても少し覗いてみたいと思わせる作品。
ケンサイトウ「何処か」
遠景の霞のつよい空気表現と近景のインダストリアルな要素とが連続的にマッチしており、まるで音さえも聞こえてきそうな臨場感を与えている。また、描かれた時間帯と彩度を抑えた色選びとによって哀愁を感じさせて前記臨場感をより補強しており、全体として鑑賞者を引き込む良い作品だと感じた。
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キュピ山「・・・」
少年の視線の先に見えるものを鑑賞者に想像させるとともに、作品を広く占めるベランダの余白が、それをポジティブなものに見せるかネガティブなものに見せるか、鑑賞者次第に解釈することができる。
まさに日常をそのまま切り取ったシーンを描いているが、ベランダの隅に雑多に置かれた小物類がリアリティを補強しつつ、ベランダの余白表現を際立たせている。
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〈審査代表〉
わいっしゅ
愛知県出身の背景デザイナー。ゲームや書籍などを中心に、世界観設定や背景美術を専門に扱うクリエイター。Sci-fiやファンタジー世界のデザインを得意としている。
2006年に大学院を修了(工学)。電機メーカー、特許事務所、ゲームメーカーを経て2019年からフリーランス。
After completing graduate school, he worked as an engineer at an electrical manufacturer. After that, I started drawing illustrations while engaging in work related to intellectual property at a patent office. I debuted as an illustrator, while working at a patent office. After working at a video game maker, I am currently working as a freelance environment artist.
My specialty is the creation of science fiction and fantasy worlds.
名古屋大学大学院工学研究科を修了後、電機メーカーにエンジニアとして従事。 その後、特許事務所に勤務しながらイラストレーターとして商業デビュー。 現在はニトロプラスに所属しながら、フリーランスとしても活動。 代表作に、ライトノベル『リビルドワールド』世界観イラスト、ゲーム『うたわれるものロストフラグ』背景イラストなど。
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