東京展について

「東京展」は、1975年に表現の自由と発表の自由を求め、決して権威主義に屈することのない創造の場をめざして結成いたしました。

作品のジャンルは、平面(具象、非具象)・立体・絵本・コミックアート・版画・イラスト・写真等広範囲におよび、壁面の使用は号数の制限・点数の制限をはずし、作家の意思を最大限に尊重してきております。  
他の団体展との大きな違いは、運営委員会が推薦した作家の作品を展示するという「推薦制」をとり、作家自身の厳格な主体的責任において作品の発表を行っているところにあります。  なお、国際交流も当初から重要な視点とし、大韓民国・ロシア・オランダ・アメリカ・バングラデシュ等の美術を紹介し、大きな反響を呼んできました。また「顕彰故展」では、国内の物故作家の代表作を多数展示し、多くの共感を得ております。 「東京展」は、毎年秋に東京都美術館において展覧会を開催しておりますが、皆様の幅広いご批評を頂ければ幸いです。
併せて自由な精神で創造の世界を追究する全国の制作者の参加を心から希望しております。

 東京展美術協会 運営委員長  高倉和郎
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東京展略史

■はじめに
当時の「東京展」市民会議の声明文の中に(抜粋)。<…新しい可能性を探る、こうした芸術の変質と多様化の中で、今日の芸術をめぐる環境を考える時、さまざまな文化行政はもとより、狭いセクト意識に固まった芸術団体のあり方にも疑問を投げかけざるをえません。私達が、新しく出来た東京都美術館の出発にあたって都民の為の公正な運営を提言し、更に進んで、ありうべき美術館の新しいイメージを実現する為に「東京展」の開催に踏み切ったのも、芸術における偏見やヒエラルキーを無くす為に行動を起こす必要を痛感したからでありました。(後述略)>この提言には今も光を放つ文言があり、現在のそして未来の「東京展」於いても、いや日本の美術状況に於いても一つの重要な指針となるべきものと考えます。東京展略史と合わせ、再度ご考察下さい。

■略史(西暦年)
1974(11月11日)
50余名の画家が結集し、都立新美術館問題対策協議会を結成。中村正義、笹岡勇らが展覧会実現の協力要請の為、美濃部革新都政の立役者の一人である中村哲(法政大学総長)を訪問。

■1975(2月1日)
東京展準備委員会発足。(翌2日)中村正義は山本正雄と共に針生一郎を訪ね、展覧会実現の要請を図り、針生は(方向性のあるアンデパンダン:招待部門・一般部門)とする事を前提に承諾。(中村正義は死の直前まで作品の質を高めることに終着。既成の公募団体に内包するヒエラルキーを廃絶した、同志の連帯による、公募審査制の団体展を目指していた。)東京展実現に向けて、中村哲を議長に、中村正義を事務局長に東京展実行委員会(後の東京展市民会議)を立ち上げ、委員会には上記二人の他に、針生一郎、岡本太郎、井上長三郎、丸木位里、寺山修二、笹岡勇、深尾庄介、人人展会員らが集まり、今までの都美術館側の日展をはじめ、既成の公募団体への借館独占問題等、美術家らの批判を主体に、新都美術館での運営方法の一新も含め、3000人の賛同支持者を集め、自由な発表の場を求め始動し始めた。(2月25日)ビラ(東京都民美術の祭典「東京展」アピール)を作成配布。(3月22日)都の社会教育部長、東京展準備委員会の代表との懇談会で「東京展」をこの年の秋に開催することを決定。(4月28日)「東京展実行委員会組織大会」開催。大会宣言を採択。この大会宣言を受けて、「東京展市民会議」が正式に発足。美濃部都知事宛の決議文をまとめる。(5月12日)社会党都議会幹事長沖田正人立会いで都教育長宛に東京展実行委員会名で「東京展」の会期は11月1日〜14日間の要請書を提出。(6月7日)東京展・日展のトップが歩み寄り東京展は11月1日〜20日まで。日展は11月2日〜12月8日までと両者同時開催が正式に決まる。(9月1日)新東京都美術館開館式挙行、2日から一般に公開。(以上笹木繁男・東京展カタログ【東京展草創期の頃】からの抜粋)。(11月1日)当時の美術状況の中で、最も衝撃を与えた展覧会になった「第1回美術の祭典東京展」が新都美術館で開催される。期間中の観客動員数7万7千人以上。主な出品作家:岡本太郎、元永定正、上田薫、輿水璋、井上長三郎、荒木経惟、北山泰斗、深尾庄介、小作青史、田名網敬一、笹岡勇、建畠覚造、脇田愛二郎、四谷シモン、小清水漸、速水史郎、永井一正、高山登、田島征三、マッドアマノ、山本貞、丸木位里、田代光、山下菊ニ、松沢宥、山本政雄、齋藤真一、オノサト・トシノブ、黒崎彰、相笠晶義、菊畑茂久馬、上原二郎、此木三紅大、佐藤多持、中村正義、他枚挙に暇がないほど程の著名作家が参加していた。一般部門も含め、出品総数1691点。他に屋外に出ての天井桟敷:寺山修司の参加、おんでこ座の太鼓、クモ男のハプニング、数々のシンポジウム、映画上映、久里洋二:アニメ、現代音楽演奏、舞踏家ギリヤーク尼崎、各新聞社、雑誌社の挙っての取材等。まさに祭典、想定外の活況を呈した。カタログへの執筆者・美術評論家:野村太郎、瀬木慎一、針生一郎、赤根和生、日向あき子、ヨシダ・ヨシエ、石子順三、石崎浩一郎、平井亮一、他執筆者多数。後援:東京都。

■1976
第1回展の展示の問題、都美術館側の東京展日程変更の問題等で、針生一郎、丸木位里ら30名が東京展市民会議から退会。「第2回美術の祭典東京展」が日展と時期を外し(9月21〜10月8日)開催される。東京都は東京展の後援を外す。主な出品者:岡本太郎、井上長三郎、菊地寛、深尾庄助、濱野彰親、等、企画部門:泥絵、明治・大正・昭和さし絵名作集、書:草野心平、加藤唐九郎、熊谷守一、野坂参三、今東光、等多数、絵本の部屋、数々のワークショップ、アニメ、戯団・款徒、ビデオ、写真、SF、と他の団体に無い催し物を挙行。

■1977(4月16日)
東京展の実質的な立役者中村正義逝く(享年52歳)。第3回展(都美術館)(9月21〜10月8日)中村正義遺作展示を行う(この遺作展示は第6回展まで続く)。主な出品者:岡本太郎(岡本太郎は第4回展まで出品)井上長三郎、深尾庄介、此木三男、永井一正、室田豊四郎、他コンピューター・アート、絵本原画、手作り絵本、漫画集団作品展:手塚治虫、やなせたかし、おおば比呂司、馬場のぼる、富永一郎、サトウサンペイ、ヒサクニヒコ、ちばてつや、他著名作家多数。日本画部門中村正義遺作コーナー。
書:永六輔、井上ひさし等の参加。都美術館講堂にては:都美羅寄席(寄席美への招待)落語・紙切り・寄席文字教室。

■1978
第4回展(都美術館)(9月27〜10月12日)企画展示:『ソ連亡命作家展』この展示もかなりの話題を呼んだ。絵本の部屋。中村正義遺作コーナー。

■1979
第5回展(都美術館)(9月27〜10月12日)企画部門:武井武雄の作品(国際児童年・協賛展示、顕彰故展:山本蘭村、横堀角次郎、西田勝、西八郎。飛翻化蝶展(芸術療法・20年の成果、青森八戸青南病院)、イラスト部門:赤瀬川原平、宇野亜喜良、小松崎茂、横尾忠則、富永一郎、真鍋博、他、総勢112名参加。5回展から、運営委員・会員制の設置。田代光が事務局長となる。

■1980
第6回展(都美術館)(9月26〜10月12日)企画展示・映像作画合成の為の原画展(石井義男)、’80
イラストレーター150人の部屋、漫画家結集・合作大壁画展示、舞踏家“大道芸人”(投銭)ギリヤーク尼崎、顕彰故展・立石鉄臣。出品者の意欲、作品の質の向上の為東京展に賞の設置。

■1981
第7回展(都美術館)(9月20〜10月6日)企画展示・近藤日出造遺作展、インドの(ラジニーシ・アートグループ展)、’81イラストレーターの部屋、漫画の部屋、顕彰故展・阿部ケイ。

■1982
第8回展(都美術館)(9月21〜10月6日)企画展示・江戸小紋の世界(小宮康考)、ポーランド現代版画、顕彰故展・畠山三郎、四方田草炎、渡辺義知。講堂にて:盲僧琵琶の演奏、野田真吉映像の世界、音のイヴェント展(丸山亮・谷中優)。

■1983
第9回展(都美術館)(9月21〜10月6日)企画展示・「大韓民国今日の美術展」、「韓国民族刺繍・金小珍」、
「四君子書画・中マリア」、「小松崎茂の部屋」。顕彰故展・菅創吉、藤波ちげん。

■1984
第10回展(都美術館)(9月27〜10月13日)。企画展示・「大韓民国今日の美術展」。顕彰故展・勝本富士雄、中川巴、平川信子。

■1985
実行委員長・薄井正彦選出される。第11回展(都美術館)(9月27〜10月13日)。企画展示・「大韓民国今日の美術」、「世界の子供の絵」、「組み木絵」。顕彰故展・灰谷正夫。

■1986
第12回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。企画展示・「大韓民国今日の美術」「桐生養護学校生徒作品」「加太こうじの部屋・紙芝居(黄金バット)実演と作者講演」。顕彰故展・岡本治男、小山寿夫。

■1987
運営委員長・深尾庄介選出される。第13回展(都美術館)(9月18〜10月3日)、企画展示・「球形の美・日本の手まり」、「ポーランド現代美術」。

■1988
第14回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。企画展示・「オランダ現代美術 出島Deshima‘88」。
顕彰故展・磯野新次郎。

■1989
第15回展(都美術館)(9月19〜10月3日)。顕彰故展・田辺竹次、浦久保義信、黒谷太郎。

■1990
第16回展(都美術館)(9月19〜10月3日)。企画展示・「P・バックリー・モス展」、「レニングラードの画家達、今。展」、顕彰故展・中間冊夫、巧刀陽子、佐川敏子。

■1991
第17回展(都美術館)(9月19〜10月3日)。企画・『現代絵画と中世の音』、「ロシア東と西3人の現代美術」、顕彰故展・田代喬之、団勇、中嶋保彦、渡辺武雄。

■1992
第18回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。企画・「個性派・一芸サラリーマンonステージ」、
PARFORMING ARTS 「声の箱」。顕彰故展・岩中徳次郎、渋谷英治、百瀬浩。

■1993
第19回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。企画展示・猪風来「土の芸術」、油野誠一(絵本古事記)『神々の風景』。顕彰故展・佐藤昭平、天沼高議。

■1994
第20回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。企画展示・小松崎茂の世界、虹の部屋(橘幼稚園)顕彰故展・小関利雄、藤澤喬。

■1995
第21回展(都美術館)(9月19〜10月19日)。顕彰故展・西八郎の絵画。

■1996
第22回展(都美術館)(9月19〜10月3日)。企画展示・長谷川集平「絵本の世界」、顕彰故展・田代光、佐々木基一、野田眞吉。

■1997
第23回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。顕彰故展・井上長三郎の絵画。

■1998
第24回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。企画展示・3人展(カイサ・ハグルンド、ヴァシリス・セオドル、城下るり子)、顕彰故展・井上照子。

■1999
第25回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。企画展示・ロシア現代画家2人展(アンドレイ・キム、オレグ・リャープクソフ)。第25回展を記念して5年に一度の(特別)記念賞を設ける。

■2000
第26回展(都美術館)(9月19〜10月3日)。企画展示・小松崎茂の世界、絵本・えばなし。

■2001
運営委員長・薄井正彦、事務局長・村岡千亀選出される。第27回展(都美術館)(9月19〜10月3日)顕彰故展・富永秀夫。

■2002
第28回展(都美術館)(9月19〜10月3日)。企画展示・「バングラデシュ現代美術展」。

■2003
第29回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。事務局長に内田信選出。顕彰故展・深尾庄介、岩崎年勝。

■2004
第30回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。第30回展記念出版として「美術の祭展東京展」を出版。企画展示・「明日への飛翔」(第6回展からの東京展賞歴代受賞者展)、顕彰故展・鴨下晁湖。

■2005
運営委員長・村岡千亀、事務局長・齋藤鐵心選出される。第31回展(都美術館)(9月18〜10月3日)
シンポジウムの見直しを図り各団体展に先駆けて、『今日の美術における〈東京〉』(9月23日)を催す。パネラー・赤津侃、永井龍之介、沢登丈夫、難波進各氏。

■2006
第32回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。シンポジウム:『戦後ドイツ美術の新潮流』(私の留学体験とその後)対談:赤津侃氏、齋藤鐵心。本年度より、その年度の終わりに(2月〜3月)に受賞者展、東京展春季会員展を開催することを決定。

■2007
33回展(都美術館)(9月19〜10月3日)。シンポジウム:『東京展vsVOCA展』「コンクールと団体展に見る日本美術の行方」パネラー:赤津侃、本江邦夫、曽谷朝絵、杉田五郎各氏。企画展示・「VOCA賞・受賞作品」、顕彰故展・鹿児島一平。第1回東京展春季会員展(2007年2月12日〜17日:地球堂ギャラリー)、
第32回展賞者展(2月19日〜3月1日:ギャラリー・セイコウドウ)で開催。以後毎年開催。

■2008
第34回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。シンポジウム『世界の美術の潮流と日本の団体展の現在』
パネラー:赤津侃、本江邦夫、田中三蔵各氏。

■2009
第35回展(都美術館)(9月18〜10月3日)。シンポジウム『東京展は何処から来て何処へ行くのか』
(9月22日)開催。パネラー:安井収蔵、笹木繁男、笹岡勇、司会:赤津侃各氏。
田中正造ドキュメンタリー映画『赤貧洗うがごとき』(9月20日)上映。企画展示・顕彰故展:森田益生。

■2010
都美術館が改装工事の為2年間休館となり、東京京橋のギャラリーくぼた・本館、別館全て借りて第36回展を開催(7月6〜17日)。

■2011
運営委員長・齋藤鐵心、事務局長・青柳芳夫選出される。第37回展を昨年同様ギャラリーくぼた、にて開催(7月19〜30日)。又同時にアートフェスタ東京展として、銀座の画廊とタイアップして展示会を開催する。(参加画廊:ギャラリー・セイコウドウ、ギャラリー・ツープラス、アートスペース銀座ワン、ギャラリー403、K’sギャラリー、ギャラリーGK、ギャラリー福山、ギャラリー銀千、ギャラリー銀座一丁目)。
東日本大震災の義援金獲得の為、小品のチャリティー展を催し、東京展の義援金は全額朝日新聞社を通して被災地に送った。

■2012
長年の懸案事項であった「美術の祭典東京展」の関西での展覧会「美術の祭典関西展」を兵庫県立美術館分館・原田の森ギャラリー(旧兵庫県立近代美術館)で催す。(1月17〜22日)。都美術館が2年間の改築工事を終え4月から開館。東京展も都美術館に戻り第38回展『美術の祭典東京展』を(9月9〜16日)に開催。
顕彰故展:鶴沢文次郎、企画展示:田所一紘展「水鏡シリーズ」、油野誠一「絵本原画と絵本展」。
横浜のGallery Shimizuの協力のもと東京展プロジェクトin KANAGAWAを開催。前期:(11月5〜10日)
後期:(11月11日〜16日)。東京展総会の承認を得て、団体名を東京展から東京展美術協会と変更。
展覧会名「美術の祭典東京展」は変更せず。

■2013
第2回「美術の祭典関西展」を旧兵庫県立近代美術館・原田の森ギャラリーにて(1月29日〜2月3日)開催。第39回「美術の祭典東京展」開催(9月9日〜16日)。顕彰故展:古田洋司、企画個展:杉田五郎、企画展示:「インターネットと現代の絵師たち」、絵師・碧風羽氏によるPCを使っての実演。シンポジウム:「若年層のいまどき芸術(美術)への思考法」パネラー:赤津侃、本江邦夫、江口健、藤ちょこ各氏、他現役美大生。新設東京展グルグルハウス賞記念展(新潟高柳市にて受賞者武藤順子と絵本の仲間展を5月3日〜30日までギャラリーグルグルハウスにて開催)以後毎年開催。

■2014
第8回「東京展春季会員展」(2月10日〜15日)を地球堂ギャラリーにて開催。
第8回「東京展受賞者展」(第39回東京展受賞者)(2月17日〜27日)をギャラリー・セイコウドウにて開催。 第3回「美術の祭典関西展」(3月25〜30日)を神戸・原田の森ギャラリーにて開催。 「東京展グルグルハウス賞」(小林五空氏)(4月16〜5月31日)を新潟県高柳町にて開催。 第40回「美術の祭典東京展」(9月9日〜15日)を東京都美術館にて開催。 同展にて昨年に引き続き、企画展として「インターネットと現代の絵師たち」開催。 「顕彰故展」・今村圭氏、「企画個展」・山田實氏を開催。 都美術館講堂にて「トークショー」(現代美術とは?)を美術評論家:赤津侃氏、美術史家:本江邦夫氏、齋藤鐵心にて開催。 第3回「東京展プロジェクトin KANAGAWA」(11月4日〜11月15日)を横浜・ギャラリーしみずにて開催。

 (齋藤鐵心 記)